静岡アンティークジュエリー 十字架に込められた想いに迫る
100年以上前に作られた、唯一無二のジュエリー、それが「アンティークジュエリー」と呼ばれています。ほとんどが受注生産だったアンティークジュエリーは、大胆、緻密、華麗…いろんな表情を持ち、一つ一つに物語があります。現代のジュエリーでは感じえない不思議な魅力を持っているといえるでしょう。
海外に比べ、日本女性の多くはジュエリーとの関わりが浅く、特にアンティークジュエリーがもつ無限の魅力をご存じない方がほとんどです。
アンティークジュエリーの面白さは、使われている素材、デザイン、作りの3つの面で、現代のジュエリーにはなかなか見られないユニークさがあることです。
アンティークジュエリーのデザインは様々ですが、今回は「十字架」に絞っていくつか紹介させていただきます。
十字架のアンティークジュエリー
十字架(クロス)は古くから、ジュエリーのモチーフとされてきました。
現存する最も古い十字架のアンティークジュエリーは、17世紀のものだと言われています。当時のものは、エナメルで細工を施してあるものが多く、十字架は女性ではなく主に男性の聖職者が身に着けるものとされていたようです。
17世紀になり、ようやく十字架は女性のキリスト教信仰の象徴となり、よりファッショナブルな十字架がでてくるようになりました。
もともと聖職者用につくられた十字架もありますが、全てが該当するわけではなく、特に1900年以降につくられた十字架は、聖職者用というよりも、当時の良家の女性用に作られたものだと言われています。宗教的なアイテムというよりも、ファッション性を考えて作られた、洗練された十字架とお考えいただければと思います。
現在、さまざまなファッションジュエリーが十字架をモチーフにしており、信仰に関係なくファッションとして親しまれているのと同様、アンティークジュエリーの十字架もファッションとして親しんでいただければと思います。
ローマンモザイク クロス ペンダント
1890年頃 イタリア(ローマ)
ローマンモザイクのクロスペンダントです。台座は金色をしていますが、銀に熱い金メッキを施したもので、とても軽い作りが特徴です。
アンティークのモザイクは、本作のようにガラスを使ったローマンモザイクと、石を使ったフローレンスモザイク(ピエトラドュラ)の2種類があります。
ローマンモザイクは極々細い色ガラスの棒をカットし、ルーペを使って精緻な絵を描いています。
実に細かいデザインで、思わず見入ってしまいます。
ピクエ クロス ペンダント
1880年頃 イギリス
べっ甲の表面に浅く切り込みを入れ、植物模様にカットした金銀の薄いいたを象嵌※したマルチーズクロスのペンダントです。表面には全く凹凸がなく、バチカンまでべっ甲で作られており、かなり腕のたつ職人によって作られたものと思われます。
※象嵌:金属・陶磁器・牙(きば)・木材などに、模様などを刻み込んで、そこに金・銀その他の材料をはめ込むこと。また、そのはめ込んだもの。
このようにべっ甲、象牙などに金や銀、真珠母貝を象嵌したものをピクエといい、17世紀フランスで誕生した技法です。舞踏会用の扇や手帳などに取り入れられていたのが始まりのようですが、19世紀に装身具としても用いられるようになりました。しかし、その製法は秘法とされていたため、ピクエは現在では制作することの出来ないとされているジュエリーの一つとなっています。
いかがでしたか?
知れば知るほど魅力にはまってしまうアンティークジュエリー。
機会があったら、ぜひその物語に耳を傾けてみてください。