【郡山市】『じゃないほう』の時計選び。

腕時計を選び方。たくさんあります。人気、資産価値、予算に合わせて、著名人愛用、憧れ等々。そのなかに、みんなが着けていると嫌だ、というあまのじゃくな選び方もあります。『じゃないほう』と呼ばれるもののほうをよしとする感じです。様々な界隈で、そんな『じゃないほう』に注目が集まる事が増えてきているように思います。世の中が多様性を尊重するなかで、今後、腕時計にも多様性が求められる傾向が高まるかもしれません。今回はとっておきの『じゃないほう』腕時計をご紹介したいと思います。
①グラハム

腕時計をカテゴライズしたときに、グラハムが属す代表的なカテゴリーは「航空業界時計」「大きめ時計」の2つでしょうか。前者には、ブライトリング、IWC、後者にも、ウブロ、パネライといったすぐにイメージできるビッグブランドがあり、これらのカテゴリーについて質問をしたとき、グラハムまでたどりつく機会は非常に稀で、語られることも少ないと思われます。ただし、だからいいというのが、『じゃないほう』の魅力です。

先日、グラハム一択だったお客様とお話しをさせていただいた機会がありました。取り扱ってる店もほとんどなくて、周りの時計好きにグラハムの画像を見せても誰も知らなかった。誰もが知っているメジャーブランドの時計はいらない。むしろ、ほとんどの人が知らないけど、ちゃんとした時計が欲しい。この想いに応えたのがグラハムのクロノファイターでした。パイロットウォッチとしての機能性を持たせた左側のリューズ、操作性を意識した「トリガー」と呼ばれるクロノグラフプッシュボタン。ブランドが持っている印象に加えて、グラハムのデザインも刺さるものばかり。いつまで隠れらていられるか分かりませんが、隠れた名門ブランドです。
②エベラール

エベラールが属す代表的なカテゴリーは「歴史ある時計」「一族経営ブランド(非グループブランド)」といったところでしょう。このカテゴリーにはパテックフィリップ、オーデマ・ピゲなど、名だたるブランドが属しています。同じカテゴリーといっても、エベラールを真っ先に思い浮かべるという方は皆無ではないでしょうか。かといって、エベラールに悪いところがあるわけではなく、いわゆる腕時計のトップブランドがこのカテゴリーに多く存在するということです。ただし、エベラールも際立つ側面を持っています。昔も今も、伊達男(だておとこ)と言えば、イタリアです。オシャレでカッコイイ。それは見た目だけではなく、生き様もです。

高級ブランドのプラダやグッチの創業の地であり、帝王アルマーニの国、1990年代にはクラシコイタリアブームを起こした、常にファッションを牽引してきたそのイタリアで選ばれ続けてきたブランドがエベラールです。スイスで生産されたエベラールの80%がイタリアに行くと言われてきました。そのエベラールの代理店がようやく日本にもできて、安心してエベラールを手に入れることができるようになりました。100年以上の歴史を持ち、イタリアで愛されてきたエベラール。現在は『じゃないほう』の印象が強いですが、知る人ぞ知るブランドの代表格です。愛用者を調べて見てください。『じゃないほう』だけに、いつの時代も曲者だらけです。
③クストス

クストスのカテゴリーは「ラグジュアリースポーツ」「スケルトン」が代表的なところ。ここには、ウブロ、リシャール・ミルといった価格も人気も天井なしのブランドが属すところです。特に「ラグジュアリースポーツ」は、もともとニッチの市場だったと思いますが、近年は拡大解釈され、シンプルなブレスレットタイプの腕時計もこのカテゴリーに属し、群雄割拠の状態です。クストスのオーナー、サスーン・シルマケスのルーツはやはりフランク・ミュラーにあり、彼の発表するプロダクトはスポーティであっても、フランク・ミュラーの時計のように品格があります。目立つ部分はトノー型という特殊なケースデザインかもしれませんが、魅力はそれだけで終わりません。群雄割拠のカテゴリーのなかで十分な個性を発揮できているブランドだと思います。

現在の状況として、ブランドとしての規模、歴史、年間の生産本数、そういった点ではメジャーブランドとは比べものになりません。合わせて、情報量という点でもまだまだ劣ります。フェラーリやランボルギーニ、ポルシェのようなスーパースポーツカーは詳細を知らなくても、その素晴らしさを理解でき、なんとなくでも、その姿や価値もイメージできるほどブランドとして確立されていると思います。それに対して、アストンマーチンやマクラーレンは見かけても何ものか分からない、スゴそうだけどよく分からない、という印象になる方のほうが多いのではないでしょうか。クストスは後者のような存在で、その価値を知っているオーナー様だけがニヤリと楽しんでいる感じがします。
④ザ・シチズン

「国産時計」「機能性時計」にカテゴライズされると思われるザ・シチズン。「国産時計」では、グランドセイコー、Gショックなどが先行するビッグネームブランドとなり、「機能性時計」としても、ザ・シチズンがリーダーではなく、スプリングドライブを有するグランドセイコー、GPS電波時計のオシアナスなどが浮かびやすいのではないでしょうか。そもそもシチズンは、ブランド名が物語るとおり、市民、すなわち、誰もが持てる腕時計作りがスタートです。ブランドのイメージは誰もが買いやすく、使いやすいというもので、その点については十分にビッグネームだと思います。では、ザ・シチズンはというと、シチズンが作る最高峰の腕時計であり、技術的には世界で類を見ないレベルのものです。年差が1秒もないというクオーツを搭載するモデル、そして、完全オリジナルの機械式ムーブメントのモデルがレギュラーモデルとしてラインナップされています。

また、日本の伝統的な技術からなる和紙を使った文字盤を、日本の四季に合わせてデザインしたり、漆職人の持つ技法を文字盤の上に表現したりと、唯一無二の腕時計を発表し続けています。実は、結構な頻度で目にするくらいアナログ、デジタル問わず情報は発信されているのですが、市場でのシチズンのイメージに高級感があまりない為、スルーされることが多いのが現状です。ただし、世界に類を見ない技術を持ち、唯一無二の時計作りをしているとなると、その魅力に気づく方がやっぱりいます。名だたる腕時計を経験しながら、何もしなくても時間が狂わない、日付の修正もいらない、まず止まらない。そして、文字盤に特長があり、しかも実用的に軽い。長年、多くの人に受け入れられる時計を作ってきただけあって、そのデザインはシンプルで飽きのこないもの。理屈と条件を羅列すると、選ばれない理由がありません。
『じゃないほう』の時計を選ぶなら
いかがでしょうか。『じゃないほう』の時計のご紹介。なぜ、現在『じゃないほう』なのか。それぞれに理由が考えられます。その理由は普遍的なものではなく、時代や流行、ちょっとしたきっかけでガラリと変わるものです。昔から、「目利き」「先見の明」「目の付け所がいい」など、多勢の物選びをしない人が称えられる言葉も多くあります。多様性が尊重される時代になってきましたので、気になる『じゃないほう』の時計を選んでみてもよいのではないでしょうか?
